メキシコ(2) アクアビクス、揺らめく腕毛
(続き)
ルールを決めた。
『アルコールを飲むのは正午を過ぎてから』
怖いのよ。
飲み放題、朝から晩まで、頼めばいつでも持ってきてくれる、アル中即日製造システム。
私は他の二人ほどは飲めないんだけど、ちびちびちびちび一日中飲んでいる事にかわりにはない。しかも毎日、本読みながらグダグダしているだけなので、さすがにこれはいかんと思い、ナッちゃんと私はホテル主催のアクアビクスに参加する事に。
メーちゃんは滞在期間が限られているので、そんなヒマはないらしく、プールサイドで、トロピカルカラーの飲み物を片手に読書を続行。
時間になり、こんがりマッチョなブルーノマーズ似のお兄さんの掛け声の元、プールの中央に集められる参加者たち。
「いかん、、、つま先立ってギリギリ足がつく深さだ」
*証拠写真。後ろのおばちゃんはしっかり肩が出ている。
すでにギブアップの気分になるも、ナッちゃんが「頑張れ」言うのでなんとか踏みとどまる。
音楽が流れ、ブルーノに合わせて、腕を振り上げたり、キックしたり。
水面に顔がギリギリ出ているだけの私は、周囲の人が起す水しぶきに溺れそうになるも、なんとかついていく。
水しぶき越しに、ナッちゃんが笑いをこらえているのが垣間見える。
くそっ。
なんとか終わりまでこなし、最後にブルーノが参加者全員中央に輪を作るように立つように指示する。
ゆらゆらと20名ほどの参加者が近づいて丸く輪になる。
「知り合い同士が隣合わせにならないように」との事で、デブのおばちゃん→ナッちゃん→背の高いおっさん→私→背の低いデブのおっちゃん、の並びになる。
ブルーノは続ける。
「OK。じゃ、隣の人と腕を組んで輪を作って!」
えええ。
知らないおっさんと、腕組むってとっても嫌なんですけど。しかしブルーノがそう言うので、しぶしぶつま先立ちのまま歩み寄り隣のおっさんと腕を組む。
(見た目は)若い部類だったせいか、ブルーノが私とナッちゃんの間にいるおっさんに、「ラッキーだったなそこ!」と言う。おっさんは「イェーイ」とガッツポーズ。ひきつった笑顔でそれに答える私たち。
ブルーノは続ける。
「今日ここで見知らぬ他人が一緒になって何かをやり遂げました。この偶然の出会いを、うんぬんかんぬん、、」
ブルーノがなんかいい事言っている。
言っているんだが、私は水中で揺らめく両隣のおっさんの腕毛が水草のように私の腕にゆらゆら当たって、ブルーノの話にまったく集中できない。
アジア人のごっつい腕毛と違って、欧米人仕様のほっそい毛がたっくさん、極細のモズクのように触れるか触れないかの絶妙なラインで水中でタッチしてくる。
平静を装うも、おっさん越しに、異変に気づいたナッちゃんがまたも必死で笑いをこらえているのが見える。
くそー。
「いいからブルーノ早よ終わらんかい!」と心で悪態つきながら、凍りついた笑顔でじっと終わりを待つ。
ようやく解放。
「ようがんばった、ようがんばった」と、ナッちゃんに肩を抱かれる。
その後、アクアビクスに参加することはなかった。
(↓続く)
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